アダムズ・アップル

Guten Tag!
ドイツ語スタッフの蛭間です。
ドイツ語スタッフと言いましても、ピエリアでは他の言語にもちょこちょこ携わっています。
これからこちらでブログを書かせていただくことになりましたので、どうぞお付き合い下さい。
さて、先日デンマーク映画『アダムズ・アップル』の試写会に行ってきました。
北欧の至宝、マッツ・ミケルセンの出演する2005年の作品で、14年の時を経て10月から日本で公開されるそうです。
デンマーク語の発音と会話の勉強をしたことがない私は、基本的に字幕を頼りに鑑賞。
とは言え、デンマーク語はドイツ語と同じゲルマン語族。
当然似ている部分もあるので、時々耳で聞いたセリフを理解できることもあり、語学学習の面でも映画を楽しんできました。
ところで、このタイトルの「アダムズ・アップル」、すなわち「アダムのりんご」と聞くと、まず思い浮かぶのは旧約聖書の創世記にあるアダムとエバ、そして禁断の実(実はりんごとは書いていない)の話ではないでしょうか。
さらにヨーロッパ言語においては、禁断の実がアダムの喉につかえたという伝説から、「アダムのりんご」にあたる言葉は喉頭隆起、いわゆる喉仏のことも意味しています。
例えば、ドイツ語ではAdamsapfel、英語ではAdam’s apple、イタリア語ではpomo d’Adamo、ポルトガル語ではpomo-de-adãoで、それぞれ喉仏を意味します。
でもなぜか、スペイン語では nuez de Adán(アダムのナッツ)という不思議…。
一方日本語の「喉仏」は、骨の形状が座禅をしている仏様の姿に見えることに由来した呼び方だそうです。
人がある対象物を見た時に何を思い浮かべるのかは、その人をとりまく環境や気候風土、文化的背景などが大きく関わっています。
仏教を知らなければ、骨の形を見て「仏様が座禅を組む姿に似ている!」と思うこともないでしょうし、聖書に馴染みのない人なら「アダムって誰?」となりますよね。
しかしながら、喉頭隆起を表す言葉に日本語でもヨーロッパ言語でも宗教絡みの要素が含まれているという点で共通しているという偶然。
実に興味深いなぁと思ってしまいます。
映画の内容はと言うと、聖書の物語をベースに人間の内面の暗い部分を扱いながらも、重々し過ぎることはなく、登場人物は皆変人ばかりでブラックユーモアたっぷり、話の展開も予測不能。
ブラックユーモア好きの私には、かなり面白かったです!
もしご興味がありましたら、ぜひ見に行ってみてください。

